犬の死

第一章

#25 お家に帰りたいよ…… 2020.12.19 ③

いやだよ こわいよ 行かないで お父たん、お姉ちゃん、お願いだよ  ぼくどうなっちゃうの? ぼくのからだ、どうしちゃったの? だるいし、気持ちわるいし、苦しいよ  大好きなおやつも食べたくないし、 ごはんなんかゼッタイ食べたくない! 大好き...
第一章

#24 そして4日ぶりにごはんを食べた日! 2020.12.19 ②

太郎くんがいない家に着いた。空家みたいだ。 留守番をしていた母が、 「今度は太郎くんが入院なんて。どうして……」  太郎くんが体調を崩してから、家族全員ほぼ寝れない日が続いた。寝れないけれど身体は疲れている。私は泣きながらベッドに横たわった...
第一章

#21 血液検査をした日 2020.12.18 ①

昨晩と同じ、深夜1時。  太郎くんがそわそわし始めた。この日も私は心配で寝れなかった。太郎くんの変化に敏感になっていた。  太郎くんは、もよおしてきたのだろう。私は、昨日と同じものを吐くんじゃないかと怯えていた。そんな私に太郎くんは訴える。...
第一章

#19 母と太郎くんだけの日 2020.12.16

今日は母が退院してから初めての出社だった。 コロナ禍前のタイムスケジュールで過ごすわが家となった。  太郎くんは久しぶりに1時間ほど早い起床時間となったが、カットで疲れているのかベッドで寝たままだった。カットの翌日はいつもこんな感じだ。  ...
第一章

#18 運命の日 2020.12.15

第一章  2020年12月15日。運命の日。  太郎くんの病院とカットの日だった。  この日に戻りたい。 残された家族全員が思っていること。 この日に起きたことの一つでも違う選択をしていたのなら……  太郎くんは今もここにいたはず。そう思う...
序章

#17 完全なるサインと最悪なタイミング

母の退院前日の午後、気になることがあった。 気のせいかと思うくらいほんの一瞬、だけど強烈で生臭い魚のニオイがした。それが太郎くんからなのか、自分なのかわからなかった。 2代目太郎くんは肝臓ガンで14才半で亡くなった。その亡くなる数日前の生臭...
序章

#16 だれ? 変なおばさんがいる

急にぼくの家にやってきた。 さっきはレバーのニオイにつられて、近寄ってしまったけど。 このおばさんはだれだ?  だれ?  だれなんだろう…… ぼくのかすかな遠い記憶……  知っている人のような気もするんだけど、 このニオイ、ぼくは知らない。...
序章

#14 な、なんだ!? みんな変だよ!

な、なんだ!?  なにしてるんだよ!!!???  朝起きてリビングへ来たら、仕事から帰って来たお父たんが、ダンボールにお母たんの本を箱づめしていたんだ。 それを見て、お姉ちゃんが、 「余計なことしないでよ!」  バトルが始まった。 「勝手に...
序章

#13 母の退院が決まった

2020年12月になった。母が入院して3週間経った。  あらゆる検査の結果、主治医から「グラム陰性桿菌敗血症」との診断が下された。母は肝膿瘍により敗血症を引き起こし、高熱によるショック状態で救急搬送された。しかし、その原因となる菌を特定する...
序章

#12 ぼくの大好きな場所

今日は、ぼくの大好きな場所を教えるよ。  それは、一階リビングにある、長いソファーの左側なんだ! このソファの後ろには、お母たんの本がいっぱい!  ここにバスタオルや毛布が敷かれたぼくのベッドが置かれる。そこに横たわり、ぼくは、ひじかけにア...