太郎くんがいない家に着いた。空家みたいだ。
留守番をしていた母が、
「今度は太郎くんが入院なんて。どうして……」
太郎くんが体調を崩してから、家族全員ほぼ寝れない日が続いた。寝れないけれど身体は疲れている。私は泣きながらベッドに横たわった。視線の先にある、太郎くんのベッドが寂しかった。病院で太郎くんと別れた時の太郎くんの大きな瞳が瞼に焼きつく。あの瞳は私に訴えていた。
家に着いてから何をしていたのか全く思い出せない。
日が暮れた頃、心を落ち着かせるためにノートを開いたのだろう。ノートにそう書いてあるから。
18時すぎ、電話が鳴った。
心臓が凍りついた。絶対に動物病院からだ。ディスプレイに表示された番号を見て、手が震え出した。その震える手で受話器を取った。
聞きたくない! 受話器から放つ音を全身で拒否した。が、それに反し、看護師さんの明るい声!
「太郎くん、缶詰のごはん食べました!!!!!!」
「やったーーー!!!!!」
そのあとは覚えていない。「ありがとうございます」、「やったー」そんなやりとりだったはず。
受話器を置いた後、私は階段を駆け下り、号泣しながら母のいるリビングへ。
母は、最悪のことを想定していた。
「太郎くん、ごはん食べたって!!!!!」
二人して号泣。そこに仮眠を取っていた父も駆け下りてきた。
「嗚咽が聞こえたから、お陀仏になったかと思った……」
それから三人で号泣。
嬉しかった。本当に嬉しかった。
とにかく嬉しかった。
(略)もしかしたら、結石の手術後の大量のおしっこは腎臓病のせいだったのかもしれない。時々吐いて、朝ごはん食べないのも、すでに進行していたのかもしれない。 やはり一週間前に生臭い魚のニオイがしたのも太郎くんだったのかもしれない。うんちの回数が多いのもそのせいだったのかもしれない。
太郎くんはお母さんが入院して、太郎くんなりにいろいろ我慢して頑張っていたんだ。 そこで知らず知らずのうちに病気が進行してしまったのかもしれない。
うとうととしていると、夢で危篤状態の太郎くんが2回も出てきた。事実今日の太郎くんは、目もとろんとして、黄疸みたいな濁りもあって、歩こうとするとパタンと倒れ、香箱座りみたいに動かずぼーっとして、横になって顔をだらんとして……。もうダメなんじゃないかと。
だから今日入院して、静脈点滴をして、ごはんを食べたということがとても大きな事に思えて号泣。
束の間の喜びかもしれない。一喜一憂続くかもしれない。でも太郎くんが天国に行くのはまだ早い。
あと2年は早いよ! まだお世話をさせて!
背中にドーン、おしりをドーンとぶつけて一緒に寝たいよ。太郎くんがんばれ!
2020.12.19 太郎くんの闘病日記より
がんばって! 乗り越えて!!
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