#16 だれ? 変なおばさんがいる

 急にぼくの家にやってきた。
 さっきはレバーのニオイにつられて、近寄ってしまったけど。

このおばさんはだれだ?

 だれ?

 だれなんだろう……
 ぼくのかすかな遠い記憶……

 知っている人のような気もするんだけど、
 このニオイ、ぼくは知らない。

 ぼくが嫌いな病院のニオイに似てるんだ。
 だから、イヤだ。

 お父たん、お姉ちゃん、家にいたくないよ。
 お散歩行こう! 早く行こう!!

スタスタ、今日はいい天気だ〜

 あーーー、お散歩最高〜〜〜♪

「おうちに帰りたくないよ。もっと行きたいよ!」

 ぼくは、お姉ちゃんにねだった。

「もう、遅いから帰ろう。お母たん待ってるよ」

 お母たん? 誰それ? 

 帰ると、ぼくの大好きな場所に、知らないおばさんが座っていた。
 もう、この部屋にいたくないよ。

 お姉ちゃん、早く寝よう!
 こんなぼくを心配してか、お姉ちゃんは寝る前にぼくに話してくれた。

「太郎くんがずっと待っていたお母たんが帰ってきたんだよ。でもね、病気になってずっと病院にいたから、お薬のニオイでお母たんのニオイじゃなくなったんだよ。だから太郎くんはわからなくなっちゃったんだよね。そのうち、太郎くんが知ってるお母たんのニオイに戻るからね」

 お姉ちゃんは、ぼくの頭をなで、「太郎くん、いい子だね」って歌ってくれた。

お姉ちゃんのベッド隣にある、ぼく専用のベッドが2つ。
白くまちゃん枕をして、”ニャンコ先生”と呼んでいるぬいぐるみが寄り添う。これがぼくの寝室。そして、寒かったりさみしくなるときは、隣のお姉ちゃんのベッドに行くんだ。

 お母たん……わからない。誰なんだろう。
 あのおばさんがお母たん?

 ぼくは寝た。

夢みて、「ワフワフ」と寝言を言う太郎くん。

 そして、いつも目覚める深夜3時。
 お姉ちゃんのベッドに上がり、お姉ちゃんと一緒に寝る時間だ。

 今日は特にさみしかった。

 ぼくは背中をピッタリと、お姉ちゃんの背中に合わせた。
 お姉ちゃんの背中はあったかい。   

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