
魔の時間が早まった。夜中1時頃から落ち着かない。そして、私の布団の中にもぐりたがる。寒いのとあったまりたいのと、暗い中に包まれたいのだろう。
朝から異常な呼吸だった。
鼻水を出しながら、吐く時にタイヤの空気入れポンプのようなシュー、シューっという呼吸音。これがしばらく続いた。
そして、昨日薬を入れて失敗してしまったカステラは食べなかった。
バカバカバカ!
もう何も食べなくなってしまった。
何も食べないまま動物病院へ行った。この頃から、昼休みを利用して通院できるよう、太郎くんの平日の通院はほぼお昼の時間となった。
この日から緊急事態宣言が再発令された。
動物病院でも規制が厳しくなった。一人しか入れない。太郎くんを父に託し、私は車の中で待っていた。
父には、何も食べないこと、呼吸がおかしいこと、静脈点滴をした方がいいか聞くようにお願いした。
診察を終え戻ってきた父からは、先生に食べないこと呼吸がおかしいことは伝えた。静脈点滴はいつでもいいとのこと。ただ、緊急事態宣言中は入院しても面会はできなくなるとのことだった。
緊急事態宣言を恨んだ。こんな時に!
そして、自分で疑問に思ったことを先生に直接聞けない苛立ち。処置の方法が他にないの? 先生は強制給餌してくれないの? しかも入院させたら太郎くんに会えない!? そんな!!
苛立ちでいっぱいだった。太郎くんの食欲をどうやって戻そう。
この頃は、犬が食べるもの、食欲のない犬が食べるもの、いろいろな検索ワードで調べまくった。
生肉、馬肉、唐揚げ、バニラアイス、生クリーム、バター、カステラ、どら焼き、菓子パン……
まだ太郎くんには救いはあった。おやつは食べていたから。おやつすら食べなくなった日が恐怖だ。
病院から帰り、空気入れのような呼吸も落ち着いていた。
少し休み、おやつの時間がやってきた。
こんなに食べさせるのが大変になるなんて。食べ過ぎて困ることはあったけど、食べないことがこんなにもつらいことだなんて想像したこともなかった。
食べないで痩せ細っていく姿を見続けるつらさ。これが看取ることなのだと今思う。
緊張感あふれるおやつタイム……
太郎くんが口を開けた瞬間、一瞬に気が抜ける。張り詰めていた空気が一気に緩む。
それをこの後も何回も何回も経験する。それが当たり前になる。
おやつだけでもカロリーを摂らせたいと、太郎くんが食べるだけ食べさせた。シニア犬のおやつ 乳酸菌入りの小袋1つに、グルコサミン・コンドロイチン入り
の小袋を半分。しばらく嫌っていた絹紗シリーズ
も復活した!
喜びも束の間。
この日はこれが最後だった。この後は何も食べなかった。
そして、呼吸がまた異常になった。

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