〜プロローグ〜

5ヶ月過ぎた。
あの日々が遠くなっていく…
当たり前のこと過ぎて記憶に留めていなかった。
思い出そうとしても、当たり前のことだったから思い出せない。

ただわかるのは、それは幸せで愛に満ち溢れていた時間だったということ。

太郎くん

13年近くほぼ毎日一緒にいた。
私の歳からすると、息子だった。
成長のしない息子。
学校にも行かない、友達とも遊びに行かない、ずっとずっとべったり、自立しない息子。
甘えん坊で、自分のしたいことは、目や鼻声で訴え、家族を動かしてしまう不思議なパワーの持ち主。

あの日は突然やってきた。
どうしてこうなってしまったのだろう。この世から消えるまでは、元気になることを信じていたから振り向かなかった。

振り向いてはいけなかった。
しかし別れが近いうちに訪れることを悟った瞬間、振り向いてしまった。

どうしてこうなってしまったのだろう。
どうして……

そして、この世からいなくなってから強く強く激しく思う。
どうしてこうなってしまったのだ、と。

思いっきり振り返りと、あの時ああしていればと後悔することばかり。
前に進むことができない。

だったら、このことを書き留めておこう。

太郎くんが、この世にいた証を。
太郎くんが、必死で生きて、必死で頑張っていた日々を。

そして都合よく信じる。また出会えることを。
フワフワ、モフモフのキミを、再びこの手で抱きしめられることを。

でもわかっている。
そんなことは無理なんだと。
それが死だということを知っているから。

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