#4 ぼくの家族を紹介します。

 ぼくは、大神家の長男・太郎。今年70才になる個人タクシーのお父たんと、専業主婦のお母たん、40代契約社員で独身のお姉ちゃんがぼくの家族。
 どうやら、ぼくは2ヶ月の時にこの家にやってきたそうだ。だからお父たんもお母たんもお姉ちゃんも今より10才以上若かったことになる。ぼくは、軽井沢に近い群馬県安中市で生まれ、兄弟と一緒にゴールデンウィーク前に東京近郊のイオンモールのペットショップに派遣されたらしい。ちょうどそのペットショップでは、こどもの日セールを開催していた。その目玉に、ぼくとぼくの兄弟が選ばれたんだって。その広告を見たお母たんとお姉ちゃんがやってきて、ぼくを見つめた。

ぼく。お姉ちゃんが抱っこして、店員さんにチェキで撮ってもらった。
こっちは兄弟。スタンプの裏側には笑顔のお母たん怒!

 その数時間後、家族になる契約をしたらしい。そして翌日には大神家の息子となった。しかし、お母たんはぼくをいじめるヤンチャな兄弟の方を好んでいたらしいけど、お姉ちゃんがぼくに一目惚れして、ぼくが選ばれた。なのにお姉ちゃんは、マタニティブルーのようになり、ぼくを連れてくることを一晩悩んだという。その頃のぼく自身の記憶なんて、全くないからわからない。後から何度も聞かされて「ひどい」って何度思ったことか。だって、ぼくの記憶のスタートは、福島の叔父さんから送ってもらったアイコというミニトマトを食べて”美味しい!” と思ったあの夏の日からしかないのだから。

 だからぼくはずっとこの家に生まれ育ったものだと思っていたし、家族は本当の家族だと信じて疑わなかった。どうも、ぼくだけ「犬」という生き物で、ぼくだけ違うのは感じていたけど、それは何が違うかわからないし、ぼくは、ぼくのまま生きるということしかわからない。ただお散歩に行けば、ぼくと同じ「犬」に出会えた。でもみんな家族と一緒にお散歩しているし、2本足か4本足か、言語が違う、食べ物が違う、そんなことしかわからなかった。家族の中でぼくはいつも中心になっていて、まるで王子様だな、そんなことをいつも思っていた。

愛犬を看取るということ 〜be with my dog~

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