犬の看護

序章

#11 お姉ちゃんなんか大っ嫌い! お母たん早く帰ってきて!

最近のお姉ちゃん、嫌いだ! いや、大っ嫌いだ!  ずっと忙しくしてるし、ぼくと一緒にゴロゴロしてくれない。ぼくが何か言うと、 「ちょっと待って!」  そればっか。やっと、ぼくのそばに来てくれたと思ったら、大っ嫌いな耳掃除するんだ!  あーあ...
序章

#9 濃縮ジュースの嫌な予感

母の容体が安定してからは、心のゆとりもできた。 太郎くんの免疫低下のサインも見逃すほど、緩んでいた。 「太郎くん、こっち見て! お母さんにメッセージ言って」とねだったり、「クーン、クーン、クーン」と甘えた鼻声を言わせたり、無理矢理おもちゃの...
序章

#8 サインは出ていた

母の入院4日め。 母の容態が最悪だった。  洗濯物を預けた看護師さんから容体を伺い、ガラス越しに見た母の顔が浮腫んでおり、顔色は土色。ゾッとした。その帰りは泣きながらペダルを漕いだ。  太郎くんは、そんな私の様子を敏感に捉えていた。  それ...
序章

#7 太郎くんの追加されたルーティーン

太郎くんの基本的なルーティーンは守った。  ただ、私が母の病院に行く時間の夕方6時半〜8時に、太郎くんは1階のリビングでお留守番(厳密には2階で父は寝ているのだが)することになった。 幸い母の病院は自転車で15分という近い場所だった。それに...
序章

#6 そして母がいない生活が始まった

父、太郎くん、私だけの生活が始まった。  いい年をして独身、家のことは母任せだった。太郎くんを迎えた時に“マタニティブルー”になったように、「太郎くんを育てること=子育て」だった。まさにその時、結婚適齢期であった。当然、長い付き合いの彼Nと...