愛犬を看取る

序章

#14 な、なんだ!? みんな変だよ!

な、なんだ!?  なにしてるんだよ!!!???  朝起きてリビングへ来たら、仕事から帰って来たお父たんが、ダンボールにお母たんの本を箱づめしていたんだ。 それを見て、お姉ちゃんが、 「余計なことしないでよ!」  バトルが始まった。 「勝手に...
序章

#13 母の退院が決まった

2020年12月になった。母が入院して3週間経った。  あらゆる検査の結果、主治医から「グラム陰性桿菌敗血症」との診断が下された。母は肝膿瘍により敗血症を引き起こし、高熱によるショック状態で救急搬送された。しかし、その原因となる菌を特定する...
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#12 ぼくの大好きな場所

今日は、ぼくの大好きな場所を教えるよ。  それは、一階リビングにある、長いソファーの左側なんだ! このソファの後ろには、お母たんの本がいっぱい!  ここにバスタオルや毛布が敷かれたぼくのベッドが置かれる。そこに横たわり、ぼくは、ひじかけにア...
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#11 お姉ちゃんなんか大っ嫌い! お母たん早く帰ってきて!

最近のお姉ちゃん、嫌いだ! いや、大っ嫌いだ!  ずっと忙しくしてるし、ぼくと一緒にゴロゴロしてくれない。ぼくが何か言うと、 「ちょっと待って!」  そればっか。やっと、ぼくのそばに来てくれたと思ったら、大っ嫌いな耳掃除するんだ!  あーあ...
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#10 ちょっと待って!

「クーン、クーン」「ちょっと待って!」  ほら始まった。太郎くんはおしゃべりだ。トリマーさんからも「太郎くんはお話上手だね」と可愛がられ(うるさいってことだった?)、いつも人気者だった。 太郎くんがこれまでお留守番したことは5本の指で足りる...
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#9 濃縮ジュースの嫌な予感

母の容体が安定してからは、心のゆとりもできた。 太郎くんの免疫低下のサインも見逃すほど、緩んでいた。 「太郎くん、こっち見て! お母さんにメッセージ言って」とねだったり、「クーン、クーン、クーン」と甘えた鼻声を言わせたり、無理矢理おもちゃの...
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#8 サインは出ていた

母の入院4日め。 母の容態が最悪だった。  洗濯物を預けた看護師さんから容体を伺い、ガラス越しに見た母の顔が浮腫んでおり、顔色は土色。ゾッとした。その帰りは泣きながらペダルを漕いだ。  太郎くんは、そんな私の様子を敏感に捉えていた。  それ...
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#7 太郎くんの追加されたルーティーン

太郎くんの基本的なルーティーンは守った。  ただ、私が母の病院に行く時間の夕方6時半〜8時に、太郎くんは1階のリビングでお留守番(厳密には2階で父は寝ているのだが)することになった。 幸い母の病院は自転車で15分という近い場所だった。それに...
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#6 そして母がいない生活が始まった

父、太郎くん、私だけの生活が始まった。  いい年をして独身、家のことは母任せだった。太郎くんを迎えた時に“マタニティブルー”になったように、「太郎くんを育てること=子育て」だった。まさにその時、結婚適齢期であった。当然、長い付き合いの彼Nと...
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#5 ぼくのルーティーンを紹介します。

時々、風邪を引いたり、お腹壊すこともあったけど、ご飯はおいしいし、おやつも最高!  完熟した甘いトマトは大好物。お姉ちゃんは、ぼくが大好きなものをいつも食べている。だから、お姉ちゃんが食べているもののチェックは欠かせない。  毎日毎日、ルー...