2020年12月11日。母が退院した。
家族全員、車で母を迎えに行った。もちろん太郎くんも。
退院手続きも取り、久しぶりにパジャマから服に着替えた母。やっと普段に戻れる!まだ母の体調は万全ではないが、C R Pも落ち着き、肝膿瘍も小さくなっていた。母も喜び、太郎くんも大はしゃぎのはず……車で待っている太郎くんの元へ母は急いだ。
が、現実は違った。
素っ気ない太郎くんがいた。
誰? この人??
母は喜び、車のドアを思いっきり開けた。太郎くん!!と。
だが、太郎くんの様子に驚き、喜びの声を飲み込んだ。父も私も驚いた。
太郎くんが母と目を合わせない。そして、近づかない。
実は、3日前から太郎くんは、母の捜索を止めていた。両隣の玄関前に佇むこと、宙を描くようにキョロキョロすることを止めていた。
太郎くんの中で、母を忘れようと決めた日だったのかもしれない。
きっと家に着けば、太郎くんも大はしゃぎするよ、そんなことを話ながら、家に帰ってきた。母は、一ヶ月ぶりのわが家に喜んだが、やはり太郎くんは母によそよそしかった。母という存在を忘れたのか、それとも母とは思っているけれど、病院や薬のにおいにより、母のにおいが消されて、混乱しているのか。それゆえ、別人だと思っているのか。
とにかく、太郎くんの様子が明かに違った。
もし、太郎くんが母を捜索していた4日前に母が退院していたら……。実は私の仕事の都合もあり休みが取れず、退院日を3日遅らせたのだ。それが悔やまれる。
太郎くんは、母を忘れてしまったのか? 犬の記憶力って?
飼い主のことはずっと忘れないっていうけど違うの?
疑問ばかり浮かんだ。そして、このような記事を見つけた。
中期記憶の場合は、長期記憶として残すかどうかを判断している間の1ヶ月程度記憶しておくことができるものです。
〜(中略)〜
犬は情報と情報を結びつけながら記憶することができ、「連想記憶」に優れているとされています。飼い主さんに対しては、姿形・声・ニオイ・出来事などを結びつけることによって記憶しているため、決して忘れることはありません……
犬の中間記憶とは約1ヶ月、そして飼い主の連鎖記憶は姿とニオイ……それが違うものだと認識されたのなら……
太郎くんの中にはもう、母はいなかったのだ。
でも、私は幸せだった。だからこの写真を撮っていた。
母が太郎くんが大好きなレバーをボイルし、それを待っている太郎くん。
これがいつもの光景で、これがこれからもずっと当然続くものだと思っていた。
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