魔の時間は、水をがぶ飲みしていた。
おしっこに行った後もまた水を飲む。
明け方、私は浅い眠りが襲い絶叫してしまった。太郎くんへの不安から悪夢を見て恐怖に怯えたのだと思う。内容は覚えていないけれど。
私が寝言を言うと太郎くんはいつもそばに駆け寄り、なぜか私の呼吸を確かめた後に寄り添って寝てくれた。まるで救急隊員のようだった笑。
この日もそうだった。太郎くんは元気な時のように私の背中に自分の背中をぺったんこと合わせてくれた。愛おしい。失いたくない。このぬくもりがずっとずっと続いて欲しい。
そう願いながら太郎くんの温度を感じていた。
朝起きて、父がおしっこに連れていっても弱々しい足つき。何も食べなかった。アンモニア臭も相変わらずだ。
そのままお昼になり、病院へ。
先生に、腎臓病に他の手立てはないのですか? と尋ねた。聞いたら、飲み薬のラプロスを処方された。猫用の腎臓病の薬だ。犬でもいいとのことだった。なんで今頃……こんなに悪くなる前に出して欲しかった。ラプロスは腎臓病の猫ちゃんを飼っている同僚が飲ませている薬だったので、これで太郎くんも少しはよくなるかなと期待した。
(しかし、セカンドオピニオンの先生からは、「これは猫用ですよ! 犬に処方なんて信じられない! 今飲ませているようならすぐ止めてください!」と激昂でした)
お薬は処方されたものの何か食べてくれないとあげられない。
夕方になり、いつものおやつ(絹紗)をあげてみた。
ニオイを嗅いで、口を開いた。それまでがいつもより3倍くらい長い時間だった。やっと、おやつを口に入れて、もぐもぐした。
食べた!
でも、それもたった3本で終わり。もう他には食べたくないと。結局、ラプロスもあげられなかった。
私と母は決意した。
最終手段として用意していた、ニュートリカルを舐めさせよう。母が口を開けている間に私が太郎くんの上顎にくっつけよう。そして舐めさせてカロリー補給させよう。
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私は太郎くんと約束していたけれど、舐めさせるくらいならいいだろう。シリンジであげるわけではないし、ちょこっと舌につけるだけだから。そう簡単に思っていた。
太郎くんは体力もないはずなのに、全身全霊で拒否した。こんなにも力があったなんて。口は絶対に開けないし、手を触れさせようともしない。母が逃げないように抱っこしても、これでもかという力で逃げる。
これでは太郎くんも弱ってしまう……
母も私も諦めた。やはり強制給餌は無理だ。
一瞬の隙を見て、太郎くんのほっぺを引っ張り、下歯茎に塗ることはできた。
結局、太郎くんの口の周りと私と母の手がベタベタになるだけで、実際太郎くんの身体に入ったカロリーなんてほぼないに等しかった。
疲れた……
さらに絶望感にも包まれていた。ニュートリカルをつけようとした時の太郎くんの口の中が真っ白だった。血の気がなかったのだ。
太郎くんは、寝れずにずっと宙を見ている。しかし私が布団に入ると、太郎くんは寄り添ってきた。嫌な予感しかなかった。
太郎くんが体調を崩して、何度も危険だと思ったけれど、本当の意味で死を感じたのはこの時が初めてだった。
太郎くんがいなくなる日は近い。
もう救いようのないところまで来てしまったのか、と。
たったおやつ3本しか食べなかった。ニュートリカルを舐めさせた。
アンモニア臭もひどいし、宙を見て、全く寝ない。 相当具合悪いんだ。
明日も何も食べないのか? もう入院させるしかないのか? どうか食べて! そしてラプロス飲ませたい!
少し元気になったらやはりセカンドオピニオンしよう。 太郎くんはこんなに頑張っている。
一体どこが悪いの? 何がいけなかったの?
2021.1.18 太郎くんの闘病日記より
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